ちかまブログ

本やゲームなどの感想、日記など。アイコンは @kei_K_odoshi 様から頂きました。

百円の挫折

 中学校では朝読書という時間が設けられており、1限目の前に15分の読書時間があった。新聞や辞書でなければ何を読んでもよかったはず。ひぐらしのノベライズをひたすら読むクラスメートの姿が記憶に残っている。

 私は基本的にその時に読みたかった小説を片っ端から読んでいた。中1の頃に、父親から古本屋で買ってきた芥川龍之介の『羅生門・鼻』(新潮文庫)を貰った。羅生門の概要は聞いたことがあったし、NARUTOで右近と左近が使っていた印象が妙に強かったし、何より古典文学を読めればかっこいいのではという淡い期待があった。本当は池袋ウエストゲートパークの続きを読みたかったが、我慢して芥川に移行した。

 文体や単語はやはり取っ付き辛かったものの、意外と読めたり理解できるところがあると嬉しかった。羅生門だけでなく、鼻や芋粥も少し楽しめた。ただ他の話はあまり覚えていない。

 次に手を取ったのは『河童・或阿呆の一生』。これが曲者だった。河童はまだしも、或阿呆の一生と歯車がさっぱり理解できなかった。特に歯車はあまりにも自分では読み込めずにインパクトが強くなってしまった作品だった。

 苦労しながら読み終えて、翌日からは池袋ウエストゲートパークに戻った。そもそも面白いと思った小説は帰宅しても勝手に読み進めた一方で、『河童~』は朝読書の時間にしか読めなかった。

 それまでにも逆上がりができない、50m走が早くならないなどの数々の挫折は味わっていたはずだが、これは経験したことのない種類、そして巨大な挫折だった。到底理解することができないと絶望した。

 

 しかし、今でも語り継がれる名著を読めたらいいなと憧れる心はいまでも残っている。チャレンジしては挫折した本は他にも多くある。幸いなことに古典文学は古本屋にて安価で買いやすい。苦労は買ってでもしろということわざがあるが、百円で買える挫折にしては貴重で大きな挫折だと感じる。

 今度古本屋に行ったら、芥川を探してみようと思う。