先日の記事でも紹介したコミックエッセイ。様々なうつ病当事者の罹患の経緯、そして「うつヌケ」までの過程を紹介している。
色んな方法でうつと付き合う
コミックなのでメンタルが沈んでいても読み進めやすい。筋肉少女帯の大槻ケンヂは自分の持つエネルギーがうつの時には闇のエネルギーに向いてしまうと考え、突然プラモデル制作を始めたところ、楽しく気が紛れたそうだ。内在的なエネルギーを外に発散することは効果的に思える。十数名のうつ病当事者のエピソードが収録されており、十人十色の経緯があった。うつ病当事者が千人いるなら、千通りの出来事や向き合い方がある。当たり前ではあるが忘れかけていたことを思い出させてくれる。
また、表紙の男性が手に抱えている白いおばけのようなものは作中で登場するうつの気分のキャラクターである。うつ病の症状には波があり、このキャラクターも来たり来なかったりする。うつをただ撃退・克服するだけではなく、うつと上手く付き合うという考え方も提示されている。寛解しなければダメ、なんてことは更々無いのだ。
読むタイミングには注意!
ただ、本書には注意点が2点ある。
1つはいずれも作家や編集者、ゲームクリエイターなど、子どもがなりたいもの上位Tierに入りそうな、世間一般では人気である可能性が高い職業のエピソードであること。職業に貴賤は無いが、自分の置かれている労働環境などを考えてつい自責思考になったり比較をしてしまわないように注意したい。もし、私も沈み切った時期に読んでいたら、仕事も大してできず活躍していない自分なんて、と自暴自棄になっていたかもしれない。
もう1つは登場人物が皆”うつヌケ”状態に辿り着いているので、ある程度の回復が見込めるようになった人に読んで欲しい。精神状態が一番酷い時に読んでも先述同様に却って自責のダメージを受けてしまうかもしれない。
うつの生存者バイアス
うつ病に関するエッセイなどは、回復した後に書かれたものが多いと思う。それらはうつ病当事者の希望や参考になる、素晴らしいものだ。
しかし、いずれもなんとか生き抜いて作り上げた作品・文章であり、残念ながら生き抜けなかったり、生きてはいるものの筆を執ることすらできない当事者は多くいるだろう。私のブログだって、環境に恵まれて生き抜けて、文章を書くことが元々好きだったので書き続けられている。
なので、先述の注意点の項と被るがエッセイの内容と自分の人生を比較しすぎるのは控えた方が良い気がする。このブログも同じである。
休みたての頃はエッセイやブログを読んでも「いつかはこうなるといいな、でも今はしんどいから二度寝しよう」というスタンスでいた。回復まで時間はかかったがこれは結果的に適切な姿勢だったような気がする。何事にも言えるが、生存者バイアスに過度な反応を起こすのは注意しよう。