初村上春樹。
純粋にSF・ファンタジー的な世界観での冒険が面白かった。自分の心や使命を探しにいくのは、文字通りの冒険だ。二人の主人公の物語がやがてそれらを探す冒険になるのは興奮が止まらなかった。
僕には心を捨てることはできないのだ、と僕は思った。それがどのように重く、時には暗いものであれ、あるときにはそれは鳥のように風の中を舞い、永遠を見わたすこともできるのだ。(……)僕はこの街の中のすべて風景と人々を愛することができるような気がした。僕はこの街にとどまることはできない。しかし僕は彼らを愛しているのだ。
また、物語前半から二つの世界の共通点かと読者に思わせる要素が随所に点在しているのもいい。その要素の登場のさせ方が程よい間隔なのだ。忘れそうになるタイミングで世界のリンクを想起させる。
そして物語の終わり方も私は好きだ。終わりを綴る文は、テレビゲームのエンディングでいきなりテキストや絵がゆっくりになるような静けさを感じさせた。まさにこの物語という一つの”世界の終り”を迎えるに相応しい。
おそらく限定された人生には限定された祝福が与えられるのだ。
私はついでに博士と太った孫娘と図書館の女の子にも私なりの祝福を与えた。(……)私はポリス=レゲエ・タクシーの運転手のこの祝福リストに加えた。
最後に本筋から離れた引用でこの記事を締めるので恐縮なのだが、チェスのようなボードゲームを遊んでいる際の文で、私が対人ゲームと向き合う姿勢と似ていたので紹介する。
彼にとってゲームとは他人を負かすことではなく自分自身の能力に挑むことなのだ。

